庄内ボーイズ・活動日誌

山形県庄内地域で活動する野球チーム『庄内ボーイズ』の活動内容です

アンパンミットに思う

      アンパンミットに思う

 

 「両手で捕れ!」という罵声がグランドの主役の座を奪われたのはいつ頃だろうか。いや、どこかのグランドでは今も君臨しているかもしれない。

 話は変わるが、今年の箱根駅伝やマラソン界は“ナイキの厚底靴”が席巻していた。その着用率は80%を超えるという。薄くて、軽くて丈夫なのが走りやすいと思うのだが、靴底のミッドソールにカーボンプレートが組み込まれ反発を利用すると聞けば、なるほど直線をひた走るにはいい感じだろう。

  2008年北京オリンピックの頃、競泳界はスピード社が開発した水着「レーザーレーサー」を着た選手が次々と驚異的な世界記録を生み出した。(その後禁止される)

記録向上の裏には人間の肉体の進歩や医科学的分析そして用具の進化は欠かせない。

 さて、野球用具の進歩とは何だろう。飛ぶボールだろうか?遠くに飛ばす金属バットだろうか?何か違う気がする。これらは選手の危険を顧みない商業主義に過ぎず、野球技術の向上には全く寄与していない。高校生の国際大会での打撃低迷がその弊害の大きさを物語っている。

グラブはどうだろう。イチロー選手らのグラブを手掛けたミズノのグラブ名人坪田信義氏から作っていただいた「アンパンミット」が手元にある。じっくり眺めると昔の選手の捕球動作を連想することができる。要は土手部分に切れ込みがなく、片手では捕球できないのである。

今の選手に「昔の選手はこうしたミットを使ってたんだよ」とアンパンミットでキャッチボールをさせてみると捕球にとても苦労している。その姿はまるで野球の初心者である。そして捕球するにはどうしても「両手」を必要とすることに気がつく。

 グラブの進化は片手捕りを可能にし、守備範囲を向上させる役割を果たしたことになる。手と全く同じような感覚のグラブ作りは世界にも誇れる日本の熟練の技そのものである。

 ではグラブの進化と共に日本の捕球技術も変わったのだろうか?バックハンド、バックハンドトス、グラブトスなどその使い方は多岐にわたると思われる。

 2019年11月7日付け日刊スポーツ「阿部慎之助がいた風景③探求心」にこんな記事がある。「日本ではゴロは『正面に入って捕れ』と教えられる。プロになってそれが正解なのかと思うことは多々ある。グラブさばきは圧倒的に外国人の方がうまい」

 グラブを買うお金さえない南米の子ども達の方がグラブさばきはうまいという。どういうことか?私達は正しい指導をしていないのではないか?世界一のグラブを持つ日本の子ども達は技術でも世界一のプレーヤーであって欲しい。                

                               By  佐藤 繁信