庄内ボーイズ・活動日誌

山形県庄内地域で活動する野球チーム『庄内ボーイズ』の活動内容です

軟骨の増殖を待つ

  高校時代、肩痛に悩まされていた私は病院へ行った。そこで処方されたのが「ヒルドイド」であり、その後「モビラート」へ変わったように記憶している。

 ヒルドイドやモビラートはいずれもドイツ製の鎮痛剤で、当時としてはかなり高価な薬であった。サロメチール(日本製)もあったが、私は医学先進国ドイツの薬を塗布するというだけで治ってしまったような気になった。いわゆる「病は気から」である。確かにプラシーボ(偽薬)効果?はあったが、実際は悪化の一途をたどっていたと今になって思う。それはより刺激的な効果を求め「ヒナルゴン」を塗布するようになったことからもわかる。塗布後の灼熱感は半端ではなかった。  

 

 あれから半世紀が過ぎた。野球少年の「肩・肘」の故障増加は大きな問題である。ある病院に診断に来た中高生41%が肘の故障の既往歴があったという。実際に指導してみるとこの数字が決して大げさな数字でないことがわかる。今の練習は、障害を起こすために練習をしていると言われても何の言い訳もできない。

 

 指導者は肩・肘に違和感のある選手が医者に行くことを半ば嫌う。レベルの高い選手ほど障害を訴える選手が多く、次の試合に差し支えるからである。そして医師が告げる言葉は異口同音に「絶対安静、ノースロー」であることを知っている。

 

 医者に行った選手に「どんな薬貰った?」と聞いた。「何もくれなかった」と選手は言う。その代り理学療法士によるリハビリの手順が示される。

 

 考えてみれば損傷した箇所に何を塗布しても効果はないだろう。肘の故障の一番の原因は成長過程にある軟骨の増殖を妨げることである。静かに軟骨の増殖を待つことが一番の治療法で、時間が最高の処方薬であろう。

 

 最も良い少年野球の指導者はこうした故障した選手に対し、「待つ勇気」を持つことだろう。

 

 肩・肘のケアに必死に取り組んだあの頃を思い出し、これは医学の進歩というより「変化」ではないかのと感じた。

                           

                             By 佐藤 繁信

                               2021.9.9