庄内ボーイズ・活動日誌

山形県庄内地域で活動する野球チーム『庄内ボーイズ』の活動内容です

脱スモールベースボール

        脱スモールベースボール

 

 衝撃的な一打を目の当りにした。それは今までに感じたことのない感覚であった。

 3月6日に行われたWBC強化試合、日本VS阪神大谷翔平選手は3回の第2打席で片膝をつきながらバックスクリーン右に3ランを放ち、5回の第3打席ではバットを折りながら再びセンター方向に3ランを放った。

 長く日本の野球中継を観た人でもあのバッティングから放たれた打球そして飛距離はお目にかかることはなかった。それほどまでに日本の野球ファンに強烈なインパクトを与えた一打であった。

 多くの野球解説者は異口同音に、日本が優勝するためには「スモールベースボール」の必要性を説いている。昔から言われている「スモールベースボール」とは何か。それは世界のベールボールの潮流から取り残されていないか。疑心暗鬼に陥ってしまう。

  昨年から大リーグ、シカゴ・カブスに移籍し一年間を大リーグで過ごした鈴木誠也選手は、その経験からあるテレビ番組の中で「野球とベースボールは異なるスポーツのように思える」と発言している。この意味を我々野球ファンはどのように解釈すればいいのか。

 大谷選手のあの歴史的と思えるホームランは彼がアメリカに渡った結果として生まれたのか。日本でプレーしていたら生まれなかったホームランだったか。そう考えた時、なぜかトミー・ジョン手術が脳裏に浮かんだ。

 1980年代、右肘関節ネズミの為に痛みを覚えた素晴らしい野球センスの中学生がいた。病院に行った彼は医師に告げられる。「野球を辞めなさい」

 しかし、アメリカでは1974年にすでに「トミー・ジョン手術」が行われていた。この事実を知った私は日本のスポーツ医学の遅れに愕然とした。

 アメリカの医学、トレーニングの進歩が今の大谷選手を作り上げたのではないか。科学的なトレーニング、より合理性を追求したバッティング理論、そしてその裏には確固たる医学的根拠があるに違いない。

 アメリカのベースボールは進化・発展している。その礎となっているのがスポーツ医科学であろう。その進化の過程があらゆるスポーツに、何よりも将来ある野球少年に確実にフィードバックされていくのだろう。

 大谷翔平選手はアメリカのスポーツ医科学の進化の結晶のように思えてならない。

 日米の野球・ベースボールの発展過程には大きな違いがある。一概に比較することはできない。しかし今「スモールベースボール」こそが日本野球の勝利への近道と聞くと寂しい。

大谷翔平選手、吉田正尚選手、ヌートバー選手、村上宗隆選手、鈴木誠也選手(今回は辞退)らが世界を相手に臆することなく躍動する姿が観たい。それが闇雲に勝てばいいというスモールベースボールの結果であることを私は望んではいない。

 スポーツ医学の遅れを痛感した過去を払拭し、医科学に基づいた日本野球を確立し、世界をリードして欲しい。このWBCを機に観るスポーツ、やりたくなるスポーツとして楽しくなるような日本野球の発展を願う。

 野球指導者は世界に目を向けた指導を心掛けなければならない。目指すのは野球かベースボールか、それともスモールベースボールか。責任は重い。

 昨日からWBCが開幕した。今日は日本の初戦、対中国戦である。

                          9/Mar,’23 佐藤 繁信