繁の野球子屋

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個性あふれるフルスイングを

   個性あふれるフルスイングを

 

 「昨年の準決勝で敗れて以来、相手の左腕エースを攻略するため、バットを鋭く振り、低い打球を打つ練習を徹底してきた」(7月26日朝日新聞

 

 このチームは見事昨年の雪辱を果たし、甲子園に出場した。しかしこの記事を読み終えると何か違和感を覚えた。1年前からライバルチームの好投手を倒すためにその攻略法を見出そうとする気持ちはわからないではない。正に臥薪嘗胆と言えるのか。

 

 しかし、そこにあるのは目先の勝敗であり、果たして選手の長い野球人生に生かされるのだろうか。そんな疑問が残る。この時期に習得した技術はその後の人生に大きく影響するであろう。そんな時期に来る日も来る日もたった一人の投手の攻略に明け暮れるのは何か空しい。この時期の一律の指導にも問題はないか。

 

 打撃は個人により差異があり多岐にわたるはずである。最近はフライボール革命などの理論も出てきている。こうした流れに相手のエラーを期待した「ゴロ打ち」を推奨する日本の少年野球の指導者はどう対応するのか。心配されるのは技術面だけではない。そうした偏ったものの見方・考え方がその後の思考に影響しないか。また指導者となった時にどう指導するのか。

 

 ワールドシリーズが終わった。日本人選手の活躍もあり、日本中が熱狂の渦に包まれた。同時に日本シリーズも行われた。体格差だけではない日米野球の違いをはっきりと感じることが出来た。メジャーリーガーの三振を恐れない個性あふれるフルスイングは実にエキサイティングであり観る者を魅了した。

 

 勝敗も大事である。しかし若い才能あふれる子どもたちを伸び伸びと豊かな発想力を持った人間に育てることが野球を指導する大人たちの責任でもある。

 

                           2025.11.13

                            By 佐藤 繁信

科学する野球 10

    科学する野球 10 

                    ―村上豊講習会―

*1994年5月、講習会の全ての文言を掲載

 

【足の内線と外線】

 最初に戻りますが、「捻る」という動作は腕でも足でも内側に捻る「内捻」と外側に捻る「外捻」の二つに分けられます。あとは、足と上体をケンカさせるときに体重を足のどこにおいていればいいかということになります。これは内捻させないために、又は外捻させないために足の内側に力を入れます。

 足の内側の部分を「足の内線」といい、足の外側の部分、小指側の部分を「足の外線」といいます。これも覚えて下さい。

 それから先ほど、運動方向に交り合わないといけないと言ったように、バックスイングの時の足の方向ですが、運動方向に対して交じらせなければいけませんが、その時に内線に力を入れていかないといけないんです。

内側を掘る(削る)

 外線に力を入れますと、捻ったときに体に負けてしまうわけですね。バックスイングの時に状態が外側に捻られたとき、後ろ足も、その運動方向と一緒にいったのでは負けてしまうわけです。だから必ず内側に踏ん張らなければいけなくなります。両方とも内側で頑張らなければいけない。内線で踏ん張らなければいけないんです。

 

 そのために、足の内側に捻りを加えるために、そして更に力を加えるために、バッターボックスの内側を掘ります。削ります。(もう一方の足はそのまま)そうすると足がゴボッと入りますから、上体に捻りを加えるために外側に力が働きますが、一緒の方向を向かさないためには非常に都合がいい。

 つま先で、チョチョッと削るのではなくて、内線を削るわけです。

「外反する」状態

「外反する」状態

 そのために、内線をもっと強くしなければいけません。こういう運動(写真参照)をやると内線に力が入るようになります。これをみて分かるように、小指が地面から浮いていますね。                                

 小指が浮いているこの状態を、「外反」といいます。小指の方を離して、親指の方ばかりを地面につけている状態を「外反する」と言います。外反する練習をしていくと足の内側が強くなっていきます。もっともっと強くしていくと、両方の足がベタッと地面に着くようになります。そういう足になってもらわないといけません。

【所 感】

 あるプロ野球選手の入団時から打席に立った時の後ろ足に注目してきた。

 彼は左打ちであるから後ろ足というのは左足のことを意味する。好調時は左足親指は内側を向いている。つまり内線に意識があることが分かる。ところが不調時には左足親指は真っすぐから1センチほどだろうか外側に開いて打席に立っていた。ほんの少しのことではあるが興味を持って注視していた。

 大谷翔平選手の打席での後ろ足つまり左足親指の向きを観察するのも野球を楽しくさせてくれる。ベクトルを考えるとなお楽しいと思う。

 高卒ルーキーとして数々の記録を打ち立てた内野手がいた。彼の歩き方は年々膝が外を向いてきた。内線を意識し、強化しなくてはいけないが走り方を見ると親指が浮いた状態となり運動方向へは強い力が生まれないことが分かる。彼の成績は年々低下していった。                             

                           2025.10.28

                             By 佐藤 繁信

村上豊氏の文書の複写、転載は禁止します

科学する野球 9

       科学する野球 9

                         ―村上豊講習会―

*1994年5月、講習会の全ての文言を掲載

 

【速筋と遅筋】

 さあ、それでは今度は「速筋」と「遅筋」の話に入りましょう。

これも大事なんで覚えて下さい。なぜ大事かというと400勝投手の金田正一という投手が悪いことを流行らしたんです。野球に対して「走れ!走れ!!」で走ったらいいと言うことで、長距離走で持久力をつけなさいということを言った。この持久走というのはこれは考え方が足りません。

 野球に必要な持久力は1万Mを一生懸命に走りに走って外野フライを捕るのとは違うんです。10M、20M、30Mをいかに速く走るかということで50Mもフライを追うことはないでしょう。

 ともかくそれだけの距離をいかに速く走るかということによって外野フライが捕れるか捕れないかが決まってくるわけです。そのためにはこの速筋を鍛えなければダメなんです。あくまでも速筋を鍛えなければいけないんです。

 ところが走れ、走れの持久力は遅い方の筋肉を鍛えてしまってるんです。遅筋を鍛えるということは野球の動作を行う上で逆の動作をしているということなんです。だから上手になるはずがありません。

 なぜかというと速筋で瞬発力を高め、この「速筋の瞬発力の持続」でなければいけません。ピッチャーの動作にしても瞬発力の持続でなければいけないし、打者でも一度フルスイングしただけでダメだというんではなくて、4度の打席全てをフルスイングできるものでなくてはいけないんです。「瞬発力の持続」なんです。野球は。

 それには当然、速筋を鍛えてなければいけないんです。だから長距離を走って遅筋を鍛えても時間ばかりかかって何にもならないんです。それからウエイトトレーニングにしても屈筋ばかり鍛えて野球が上手になる「捻り」が全然入っていませんから上手になるはずがないんです。

 これは時間も無駄ですし、へたくそになるためのトレーニングなんです。皆さんこれはやめましょう。

 冬場などでも走り回ったりするのは大馬鹿なんです。する事じゃないないんです。ウエイトトレーニングも同様ですが1つだけいいことがあります。それは何かというとバットを肩に担いでスクワットだけやって下さい。腕は何にも使わないでスクワットだけはやって下さい。これをやりますと、ジャンプ力がつくんです。ジャンプ力は必要ですね。 

 例えばファーストに高いボールがきたとか外野手でも内野でもジャンプして捕れるか捕れないかのきわどいボールが捕れたりとか。ジャンプ力は必要なのでこれだけは認められます。

 ジャンプ力をつけるためにバーベルを肩にスクワット、それにかかとを上下させる運動もいいでしょう。

 胸の周辺は屈筋でその裏側の部分(背中部分)が伸筋なんですが、体は上半身と下半身が腰で交差して伸筋(背中部分)は足の前の方に(すね部分)。屈筋(胸の周辺)は足の後ろの方(ふくらはぎ部分)に移るんです。そう覚えてもらったらいいです。体と筋肉の応用はこういうことになります。

 

 【所 感】 

 何かにつけ走れ!走れ!!という指導者は自らが野球に必要な基本動作を理解していないことを認めていることになる。引き出しの貧弱さを嘆くべきである。これは子どもの野球離れの大きな要因とも考えられる。遊びの中から瞬発力、ジャンプ力の向上につながるようなトレーニングを模索したい。

 野球競技と陸上競技の大きな違いを知る必要がある。つまり野球動作は素早さと同時に次の動作への切り返しが求められる。捕ったら投げる動作。常に次の塁を狙う走塁。素早くストップし、次の動作に移ることを求められるのです。陸上競技の直線を走る動作とは明らかに異なることを理解したい。

                                  2025.10.4

                               By 佐藤 繁信

村上豊氏の文書の複写、転載は禁止します

投げる動作

       投げる動作

 

                   ―慣性モーメントを小さくー

 

NPBのあるチームのエースが今年は打ち込まれるケースが多く苦しんでいる。入団当初からこの投手の投げ方、腕の使い方に興味を持っていただけに最近気になる。

 入団当初は腕の振りが大きく打者は間のとり方が難しく、しかも素早い腕の振りのため多少コントロールが甘くても打たれなかったようである。

 現在メジャーで活躍している投手も高校時代はバックスイングの大きな腕の使い方をしていた。しかしその後メジャーに渡ると明らかに腕の使い方に変化がみられた。大きく腕を振るのではなく、どちらかというと体に巻き付くような腕の使い方に変化している。

 慣性モーメントという法則がある。(以下はネットより引用)例えば、を持ち手の周りで回転させたり止めたりするときの手ごたえは傘を開いているときと畳んでいるときとで異なる。開いている時のほうが回転させたり止めたりするのに大きな力が必要になる。この時の回転させたり止めたりする時の手ごたえの大小、回転運動に対する抵抗の大小を表わす量が慣性モーメントである。慣性モーメントが大きいものほど回転の状態を変化させるのに大きな力を必要とする。

 

 つまり投げる動作に関して(打つ動作も同様である)は慣性モーメントを小さくすることで体を素早く捻る(投げる動作は回転ではない)ことが出来る。投げる腕を大きくバックスイングすることは慣性モーメントを大きくすることになる。したがって次第に肩・肘に「疲労」を生じることになる。計算上は破壊までは至らないが疲労の蓄積となりボールの力が落ちてくることが懸念されないか。

 チームの浮沈を握るエースである。どのように今後復活を果たすか注視したい。

 

                               2025.9.29

                             By 佐藤 繁信

科学する野球 8

       科学する野球 8

                         ―村上豊講習会―

 

*1994年5月、講習会の全ての文言を掲載

 

【チョット、食事の話】

 ここでちょっと食事の話をしておくと、この収縮だとか、伸展だとか言いましたが、筋肉を収縮させる食べ物というとカルシウムなんです。人間はカルシウムを摂ると収縮力が強くなるんです。それから収縮しっぱなしではダメなんで、伸びなくてはいけません。柔らかく伸びないといけません。そのためにはマグネシウムを食べないといけないんです。

 【所 感】 

 1998年3月1日、積水化学監督時代のマラソン(故)小出義雄監督との会話を思い出した。監督は「世界で勝つには栄養だよ」そしていい血液を作ること。高たんぱくの豆、植物性たんぱくを摂ること。有森選手は毎日納豆を4ケ食べることなどを熱く語っていた。

 余談になるがこの一週間後、高橋尚子選手が名古屋国際女子マラソンで30Kmを過ぎて小出監督の「ここからいけ」の合図で猛烈なスパートをかけ日本最高記録でマラソン初優勝を成し遂げた姿を思い出す。

 スポーツの世界で栄養学はトレーニングと同等に重要視されていくだろう。

 

                                2025.9.23

                              By 佐藤 繁信

村上豊氏の文書の複写、転載は禁止します

 

大リーグスプリングキャンプ巡り 4

  大リーグスプリングキャンプ巡り 4

 

                    ―太り過ぎのホーナー2ー

 

 ―1988年2月、アメリカ・フロリダ州タンパで吉田式ピッチングマシン一台をピックアップ。トラックに積み込みスプリングキャンプ中の大リーグ8球団を吉田社長と巡った。これはその時の旅行記であるー

 

 二年連続三冠王ランディ・バース選手(元阪神タイガース)を思い出して欲しい。彼は大リーグでも四番を打つ力を持っていた。しかし肩・脚が不十分で大リーガーとしては活躍できなかった選手である。来日時はともかくとして、ここ1,2年の太ったバース選手を見るとその動きが心配された。大リーガー8球団を観たものの誰一人として緩慢な動きの選手に出会うことはなかった。

 

 ブーマー選手(オリックス・ブレーブス)も同様である。三冠王を取った前後の写真は何か減量前・後のコマーシャルに出てくる姿にさえ見えてしまった。しかし、彼らの活躍には目を見張るものがあり、チームとして当然必要な戦力である。太り過ぎでも十分に通用してしまう日本のプロ野球。この現実を今は認めなければいけない。

 

 大リーグのいくつかの球団は野球の盛んなドミニカにトレーニングセンターを作り若手を養成している。即戦力=お金ではなく、そのお金を若手育成(国籍にこだわらず)のために使ってほしい。日本のプロ野球にもそうした動きが少しずつ出てきたことに期待したい。

                          2025.9.14

                            by佐藤繁信

科学する野球 7

        科学する野球 7

                        ―村上豊講習会―

 

*1994年5月、講習会の全ての文言を掲載

 

【伸筋と屈筋】

 なぜ下手になるかと言いますと、筋肉は、「伸筋」「屈筋」それに「速筋」「遅筋」に分けられます。

 まず「伸筋」といって伸ばす筋肉、「屈筋」といって曲げる筋肉、今こうして腕を曲げると力瘤ができますね。力瘤のできる方を上腕二頭筋と言います。その反対側の筋肉を上腕三頭筋といいます。この言葉は良く覚えておいて下さい。

上腕二頭筋というのは力瘤ができる方で、この上腕二頭筋は野球では使ってはダメなんです。上腕三頭筋といって上腕二頭筋の裏にある筋肉、伸筋のこれを使う運動をやらなければいけないんです。

 ピッチングで必要なのは上腕三頭筋なんです。それで先ほども言いましたバーベル運動をやるとどうなるかと言いますと、これをやりますと、それと腕立て伏せ、ウエイトトレーニングでバーベルの上下運動、それから懸垂、ロープ登り、これをやると屈筋が強くなってしまうんです。

 上腕二頭筋、屈筋が強くなるとどういうことになるかというと、ピンチになり緊張すればするほど屈筋に力がこもってしまって、よく言う「ピッチャーが腕が振れない」状態になります。

 そうすると監督やらコーチが「肩の力を抜け」と言っても屈筋に力が入っていたならば力が抜けない。ピンチとかの神経が働けば働くほど体が固くなってしまうことになります。そうすると、いつもなら投げられるボールも投げられなくなってしまうんです。筋肉は柔らかくしていないとだめなんです。

 だから監督、コーチが一生懸命肩を上下させて「肩の力を抜け!肩の力を抜け!!」と言ってみたところでダメなんです。なぜかと言えば上腕二頭筋に力が入ってスイング、腕を振ることができなくなっているからなんです。

 腕が縮み込んでしまって腕が振れなくなってしまうんです。屈筋を鍛えすぎてしまっているからなんです。

 もう一つ屈筋で大きな筋肉というのは、大胸筋といって胸の筋肉です。この大胸筋を鍛え過ぎて大きくして固くしてしまう。そうすると、これが収縮しなければいけないのが胸を張ってしまう。よく知らない人はピッチャーに「胸を張れ、胸を張れ」と言いますが、胸を張ったってダメなんです。どういうことかというと、背中の方の筋肉、背筋を収縮させなければいけないんです。

 背筋を収縮させて投げなければいけないんで大胸筋を張って投げるんではないんです。裏側を収縮させて投げるんです。胸を張ってじゃないんです。胸を張ったり縮めたりじゃなく裏側を収縮させることなんです。ウエイトトレーニングをやると、このように野球と関係のない筋肉、関節を鍛えてしまうからダメだと言っているんで、屈筋も鍛えてしまうんでダメだと言っているんです。

  【所 感】 

 野球を指導する上で上腕筋三頭筋の向きとその重要性については何度も説明する必要がある。大胸筋、上腕二頭筋といった屈筋が強すぎるとピッチャーは腕が振れなくなるという。昔ピッチャーはなで肩がいいと言われたことを思い出す。しかしその根拠を説明できる人はいなかった。

 投げる動作を分析した時、胸を張って投げているように映る。しかし背筋を収縮している動作ともいえる。この見た目には同じように映る動作が実は全く異なる動作であることを理解したい。そして子ども達にその説明が出来る指導者になっていただきたい。

                                 2025.9.6

                              By 佐藤 繁信

            *村上豊氏の文書の複写、転載は禁止します