科学する野球 9
―村上豊講習会―
*1994年5月、講習会の全ての文言を掲載
【速筋と遅筋】
さあ、それでは今度は「速筋」と「遅筋」の話に入りましょう。
これも大事なんで覚えて下さい。なぜ大事かというと400勝投手の金田正一という投手が悪いことを流行らしたんです。野球に対して「走れ!走れ!!」で走ったらいいと言うことで、長距離走で持久力をつけなさいということを言った。この持久走というのはこれは考え方が足りません。
野球に必要な持久力は1万Mを一生懸命に走りに走って外野フライを捕るのとは違うんです。10M、20M、30Mをいかに速く走るかということで50Mもフライを追うことはないでしょう。
ともかくそれだけの距離をいかに速く走るかということによって外野フライが捕れるか捕れないかが決まってくるわけです。そのためにはこの速筋を鍛えなければダメなんです。あくまでも速筋を鍛えなければいけないんです。
ところが走れ、走れの持久力は遅い方の筋肉を鍛えてしまってるんです。遅筋を鍛えるということは野球の動作を行う上で逆の動作をしているということなんです。だから上手になるはずがありません。
なぜかというと速筋で瞬発力を高め、この「速筋の瞬発力の持続」でなければいけません。ピッチャーの動作にしても瞬発力の持続でなければいけないし、打者でも一度フルスイングしただけでダメだというんではなくて、4度の打席全てをフルスイングできるものでなくてはいけないんです。「瞬発力の持続」なんです。野球は。
それには当然、速筋を鍛えてなければいけないんです。だから長距離を走って遅筋を鍛えても時間ばかりかかって何にもならないんです。それからウエイトトレーニングにしても屈筋ばかり鍛えて野球が上手になる「捻り」が全然入っていませんから上手になるはずがないんです。
これは時間も無駄ですし、へたくそになるためのトレーニングなんです。皆さんこれはやめましょう。
冬場などでも走り回ったりするのは大馬鹿なんです。する事じゃないないんです。ウエイトトレーニングも同様ですが1つだけいいことがあります。それは何かというとバットを肩に担いでスクワットだけやって下さい。腕は何にも使わないでスクワットだけはやって下さい。これをやりますと、ジャンプ力がつくんです。ジャンプ力は必要ですね。
例えばファーストに高いボールがきたとか外野手でも内野でもジャンプして捕れるか捕れないかのきわどいボールが捕れたりとか。ジャンプ力は必要なのでこれだけは認められます。
ジャンプ力をつけるためにバーベルを肩にスクワット、それにかかとを上下させる運動もいいでしょう。
胸の周辺は屈筋でその裏側の部分(背中部分)が伸筋なんですが、体は上半身と下半身が腰で交差して伸筋(背中部分)は足の前の方に(すね部分)。屈筋(胸の周辺)は足の後ろの方(ふくらはぎ部分)に移るんです。そう覚えてもらったらいいです。体と筋肉の応用はこういうことになります。
【所 感】
何かにつけ走れ!走れ!!という指導者は自らが野球に必要な基本動作を理解していないことを認めていることになる。引き出しの貧弱さを嘆くべきである。これは子どもの野球離れの大きな要因とも考えられる。遊びの中から瞬発力、ジャンプ力の向上につながるようなトレーニングを模索したい。
野球競技と陸上競技の大きな違いを知る必要がある。つまり野球動作は素早さと同時に次の動作への切り返しが求められる。捕ったら投げる動作。常に次の塁を狙う走塁。素早くストップし、次の動作に移ることを求められるのです。陸上競技の直線を走る動作とは明らかに異なることを理解したい。
2025.10.4
By 佐藤 繁信
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