繁の野球子屋

繁の野球子屋の活動です。

日本野球界の常識のウソ

日本野球界の常識のウソ

 

 これは1994年、「科学する野球」の著者村上豊氏が亡くなる一年前に講演した時の資料の一部である。

 32年前にこうした「日本野球界の常識のウソ」をはっきりと指摘した人はいない。もっともこの時代の野球界の常識に理論的な裏付けは全くない。ただ実績を上げた選手の「経験」だけが独り歩きしていた。そこに科学的根拠は存在しない。卓見に満ちた論文を受け入れる指導者も皆無に等しかった。

 自分の指導方法と照らし合わせもう一度考える価値はある。

                             2026.10.4 

                              By 佐藤 繁信

〔投〕

Ø  投球腕や肩を痛める原因は投げすぎはウソ(上腕三頭筋の向き)

Ø  投手板を平行に踏めはウソ(約45°)

Ø  腰の回転で投げよはウソ(腰の捻り、腰のキリ)

Ø  肩を止めて投げよはウソ

Ø  前足のツマ先をホーム・プレートに真っ直ぐに向けよはウソ

Ø  前足のステップ幅を精一杯広くせよはウソ(重心の上下動)

Ø  前脚を膝で90°に折り曲げよはウソ(テコのアーム長短)

Ø  後ろ膝に土が付かないのはいけないはウソ(ベクトルの問題)

Ø  後ろ足の親指で投手板を蹴らないといけないというのはウソ(コントロ 

ール・スタミナ)

Ø  バックスイングに入るとき、後ろ膝で後ろ脚を折り曲げよはウソ

Ø  体の中心線を両足の間に落とせはウソ

Ø  走れ、走れで(長距離走)でコントロールがつくはウソ(遅筋を鍛えて 

はダメ)

〔打〕

Ø  軸足を後ろ脚のみに固定するのはウソ

Ø  腰の回転で打てはウソ

Ø  バットを絞って握れはウソ

Ø  バットをトップハンドのウエブにあてがえはウソ

Ø  バットを高く構えよはウソ

Ø  体重を後ろ脚にタメて打てはウソ

Ø  ボトム・ハンドの手の甲をボールに向けて打てはウソ(平手打ちと空手 

打ち)

Ø  肩を止めて打てはウソ

Ø  ダウンスイングはウソ(中心衝突と偏心衝突)

Ø  バットのヘッドを投手の方に入れると振り遅れるはウソ(慣性モーメン 

ト)

Ø  後ろ脚を打席の前の線に直角に向けよはウソ(ヘッピリ腰を追放せよ)

Ø  グリップを体の前で構えよはウソ

 〔守〕

Ø   ゴロを股を割って捕れはウソ

Ø   ゴロは体の真ん中で尻を落として捕れはウソ

Ø   オープンハンドで捕れはウソ

Ø   両手で捕れはウソ    

体重UPは飛距離UPではない!?

体重UPは飛距離UPではない!?

        ―なぜ場外ホームラン?ー  

  

 2024年春に低反発バットが導入された。それ以前に比べ同年夏の甲子園のホームラン数は7本。昨年夏は10本、そして今年夏は8本と減少している。今年は夏の甲子園としては初めて指名打者(DH)制が採用されている。低反発バットとDH制の採用により投手の負担が軽くなったことや午前と午後に分けての二部制なども「投高打低」の傾向を強めているのだろうか。

 金属バットが採用されてから、夏の甲子園での最高ホームラン数は2017年の68本である。まだ9年前の話である。

 TVに映し出される甲子園でプレーする選手の体格は素晴らしい。練習中の食事も当たり前のようになっているようだ。4~5食/日のチームもあると聞く。そうした傾向は中学硬式チームにも浸透、食べることも練習の一環と位置付けられている。当初素晴らしいことだと思っていた。

 しかし待てよ。この時期に本格的に取り組むべきことなのだろうか。疑問を感じた。

 体重増加と打球の飛距離はどのように関係するのか。マスコミからは体重の増加に伴って球速が高まったという話をよく耳にするが相関関係どこまであるのだろうか。体重だけ増えても球速が向上するとは考えづらい。

 身体の「しなやかさ」、バットの「しなやかさ」がボールの飛距離を生むのではないか。上半身と下半身の柔軟性と相反する動きによって速いボールが生まれるのではないか。

 今夏の山形県高校野球県予選で11本のホームランが生まれた。1本はランニングホームランであるからスタンドインは10本である。意外なのは私学強豪と言われる学校は少ないことである。進学校と言われる山形南が3本、米沢興譲館、致道館が各1本と半分を占めている。特筆すべきは致道館のホームランである。鶴岡ドリーム球場左翼97.6Mのはるか場外、その放物線は実に美しかった。打者は身長172cm、65㎏のマッチョではない普通の高校生である。筋力は中学生並みの測定結果と聞く。

 このホームランを目の当たりにし、今一度野球における動作の指導法を見直し、謬見を改めるべきと感じた。

                               2026.9.20

                             By 佐藤 繁信

野球だけやっていたらヘタになる

野球だけやっていたらヘタになる

 

 遠くで軌道のきれいなボールを投げる選手がいた。近づいてみると2年ほど前に出会ったことのある選手であった。線は細かったものの素晴らしい野球センスの持ち主であったことを思い出し納得した。

 待てよ!?あれから2年…。

  あの時の印象からすると体の成長と共にもっと速いボールを投げていてもおかしくないのではと思った。残念な思いが脳裏を掠める。

 体の成長はそれぞれである。早生の子もいれば奥手な子もいる。それは十分に理解している。ただ2年前の好印象がその後の成長曲線を勝手に思い描いていただけかもしれない。

 

 小学校の子どもたちの様子から「冬季トレーニング」の重要性が軽視されていることにたどり着く。冬季間ボールを握れない時期のトレーニングである。この時期に計画的なトレーニングをせず、グランドが使えるようになって「野球」の練習が始まる。そして十分なトレーニングをせずに大会が始まる。試合では「なんでファボールだすんだ!」「バントくらいしっかりやれよ」の怒号が飛び交う。

 

「野球だけやっていたらヘタになる」 

 

 野球少年の肘・肩・腰の故障に関する報告は多い。投げる動作は本来の生活にない動作である。その動作を繰り返すのであるから当然故障するリスクは高くなる。この故障を防ぐには日頃のトレーニング、特に冬季におけるトレーニングの重要性を十分に認識する必要がある。野球上達には股関節、肩甲骨の柔軟性が欠かせない。グランドで野球をやっていただけでは、その可動域は狭くなるばかりである。 

 

 マット運動、真向法、真下投げ、ストレッチ、チューブトレーニング、メディスンボールなど多くのトレーニング方法がユーチューブなどで溢れている。指導者はその子どもに見合うトレーニング方法を取捨選択し指導するのが本来の務めである。

 色々なスポーツとトレーニングを採り入れてこそ野球技術は向上することを忘れてはならない。

                               2026.9.15

                             By 佐藤 繁信

元プロ野球選手に学ぶ

元プロ野球選手に学ぶ

 

 プロ野球OB会の「野球教室」を見学した。野球場には小学生から中学生まで180人ほどの少年少女が集い熱気にあふれていた。

 球場には名球会入りした往年の大スター投手・打者や最近まで現役でプレーした選手総勢20人がそれぞれの最終所属チームのユニフォーム姿で打撃・投球・守備に分かれ指導していた。

 

 名球会打者の指導を覗いてみた。7人ほどのグループにバッティングに対する心構えに始まり身振り手振り丁寧な説明であった。そして実践へと続く。一人一人にティーバッティングのボールがいろいろな角度から投げられていく。一球毎に「ナイスバッティング!」の声が響いていた。

 名球会投手の指導に耳を傾けてみた。ここでも一人一人、実に丁寧な声掛けである。フォームに対する適切なアドバイスの後には「おお~いいボールだ!」と褒めることを決して忘れなかった。褒められた子ども達の笑顔は輝いていた。

 若い元選手たちの真剣なまなざしも印象に残った。捕ることもおぼつかない小学校低学年の子どもであろうとその接し方、言葉遣いは正に教育者そのものであった。指導を受ける子どもたちも真剣そのもの。悪ふざけする姿は皆無であった。久々に目にする眩しい子供たちのまなざしに感動した。

 野球の動作は上半身と下半身の捻り運動である。その総体的な連鎖ではなく各部分だけの動作の指摘に懐疑的であった。しかし、時間的な制約もあり的確な部分の指摘は効果的であると感じた。元プロ野球選手のひと言に野球上達のコツを会得した子どももいるだろう。褒められてやる気を起こした子どももいるだろう。奥義を極めた元プロ野球選手の真摯な指導姿に溜飲の下がる思いであった。

 野球人口減少、MLBへの流出など日本プロ野球界を取り巻く環境は厳しさを増している。こうした活動こそがその危機を払拭する一助であることは間違いない。

                                2026.9.12   

                            By 佐藤 繁信

科学する野球 16

               科学する野球 16

                       ―村上 豊 講習会―

*1994年5月、講習会の全ての文言を掲載

 

【なぜ?の疑問を】・・・バットの握り方

 バットの握りに関しても「なぜ君はそのように握るんだ。」と問いかけられても、「いや、何となしに昔からやっていた。」「いや先輩に言われた。」とか「手の第二関節と第二関節をくっつかせなさい。」とかそんなことを言います。

 

縦割りの握り方=剣道?

 しかしなぜこんな風にトンカチで力を求めるための合理的な理にかなった握り方があるのに、監督・コーチから「その握り方では力が発揮できないじゃないか、力が入らないじゃないか」(手の第二関節と第二関節を合わせるという握り方)といわれた場合、「なぜですか?どう握ったらいんですか?なぜ力が入らないんですか?」と質問する人もいない。

 なぜ両手の第二関節と第二関節を合わせるこの握り方がいけないかと言えば、この握り方は「縦割りの握り方」なんです。剣道の握り方なんです。上から下へ力を入れるのには良い握り方なんです。ところが野球は、投手の方向から投げ込んできた投球に対して、剣道のような「縦割りの握り方」をしたのではダメなんです。

 事実明治時代に、おもしろい話があるんです。私の親父が旧制浜松一中の野球部の卒業生なんですが、その浜松一中でどんな練習をやったかというと、投手方向からボールを投げさせて「オメーン」と大声をあげながら、ボールを下に叩き付ける練習をしたということなんです。私は唖然としましたね。ところがそんな練習をしているところが未だにあるんです。愛知県にあるんですが、これがしゃがみ込んで、未だに薪を割るようなこんな格好をして練習をしているんです。

 だから物理を知らない人たちは盛んに間違った時間を使ってしまっている訳なんです。だけどいくら時間を使ってもうまくはならないんですね。無駄な時間を使っていることになる訳なんです。

 

 なぜこの格好が悪いかというと、この後ろ肘が上がらないんです。このように絞ってバットを握ると肘が上がらないんです。肘が上がらないのがなぜ悪いかというと、バットをボールと見立てて下さい。ボールを投げるのに皆さんはどうするかということです。肘を後方に上げるでしょう?

 バットをボールと見立てたとき、このバットは肘を上げて「投げる」でしょう。そうして肘を上げて投げてやればスピードが出るでしょう。それを肘を上げないで絞って投げたらどうなりますか。スピードが出ないでしょう?ボールを投げるのは肘から投げるんですから。

 バットも肘から上げていかないとスピードが出ないでしょう。それを手から叩き付けようとしたってダメなんですよ。これは剣道なんです。ダウンスイングでこんなコトしたってダメなんですよ。分かるでしょう?理屈が。

右手の外捻

左手の内捻

 理屈が分かってくると、どうしたらいいのかな、とドンドンと自分の考えが固まってきましたね。「ははあ、バットの握り方一つ違うんだな」と。



空手打ち

後ろ肘を上げる



 右打者であれば、右腕を外側に向けながら(腕の外捻)左腕は内側に向けながら(手の甲を上に向ける・内捻)、空手の構えを作るわけですね。その空手の構えから後ろ肘を後方に上げていくわけです。空手の構えだから肘が後方に上がっていくわけです。

 

【所 感】

 「ゴロを転がせ!」は軟式野球の試合で飛び交う怒号。軟式野球ではゴロを転がすことによって相手のエラーを誘い、それによって得点するのが効果的とされる。そのゴロを転がすのに有効な打ち方は剣道のような「縦割りの握り方」か?ヒットやホームランをいかに打つかを追求するかエラーを期待した打球を追求するかは指導者の考え方である。しかし将来を見据えた指導となれば当然、ヒットやホームランをいかに打つかといった指導であろう。ホームランを打つには当然打球を上げなければいけない。叩きつけたのでは打球は上がってくれない。打球を転がすときと打球を上げる時の腕の使い方は同じであるはずはない。

 相手のエラーを期待した勝利を目指した指導は必ずしも将来にはつながらないことを指導者は知る必要がある。軟式野球の指導でこうした考え方が横行しているように感じられる。それはその選手の次のステップを阻害していることになる。

                           2026.7.3

                             By 佐藤 繁信

*村上豊氏の文書の複写、転載は禁止します。

 

 

正しい投げ方 6

                          正しい投げ方 6

                                                                                     ―前足の閉じ―

 右の写真のように、前脚は内捻、前足は内側に閉じなければいけません。この動作は大きな力を生む(スピードを増す)上で大変重要になってきます。

 新聞や雑誌には多くの投球動作が掲載されています。その時しっかりと目に留めておきたいのが「前足の閉じ」です。

投手に限りません。外野からのバックホームなどの時の前足の閉じも大いに参考になります。イチロー選手などの写真も大いに参考にしてください。

  前足を閉じることによって、強いボールが生まれます。なぜなら、今、スピードの同じ車が並走して走っているとします。仮に150Kの猛スピードで走っていても、並走していれば当然同じスピードですからお互い助手席に乗っている人の表情が読みとれることになります。スピードは出ているのですが、そのスピードを感じることはありません。

 ピッチング(投げ方)も同様です。要するに上半身と下半身が同時に同じ方向を向いた(運動する)のでは、スピードは生まれてこないのです。上半身と下半身は常に反対の動きをすることによって強い力が生まれるのです。そこから「キレ」が生まれてくるのです。下半身(前脚)は内側に捻られ(内捻)、前足が閉じられた状態で、上半身がその反対の運動、捕手方向へ向かうことによってはじめてスピードが生まれるのです。

 野球に於いて上半身と下半身が常に反対の動きをするのはバッティングでも同様です。

 人間には好・不調の波が必ずあります。野球選手にとっては、その波をいかに少なくするか、又好調を維持するかが一流選手の証でもあります。

 一人の投手を追いかけてみていくといつも前足が同じ向きにあるわけではありません。微妙な違いに気がつきます。しかし一般的に好調時には前足が良く閉じられている傾向にあります。

 打者に関しては構えた時の後ろ足です。好調時にはやや閉じられた傾向にありますが、疲れが出てくると開き気味になります。ほんの一センチ程の親指の入り方の違いですが、気にして見て下さい。

 「ベクトル」とは向きと大きさを持つ量の事です。両足、両膝の向きによって両足の合力に大きな違いが生まれます。

                                2026.6.23

                                                                By 佐藤 繁信