庄内ボーイズ・活動日誌

山形県庄内地域で活動する野球チーム『庄内ボーイズ』の活動内容です

寛容であれ

           寛容の精神こそ

 

 スリーボールツーストライクからの6球目アウトコーススライダーに大谷翔平投手の僚友トラウト選手のバットは空を切った。WBC侍ジャパンは3大会ぶり3度目の世界制覇を成し遂げた。

 その瞬間大谷投手は自らの帽子をそしてグラブまでもフロリダの空に投げ上げていた。 

 大谷投手がグラブを投げた瞬間、私の脳裏に浮かんだのは防衛大学校の卒業式の光景である。防衛大学校の卒業式では厳粛な一連の行事が終了した瞬間、卒業生が帽子を空高く投げ上げ、パイプ椅子を蹴散らし講堂を走り去るというあの恒例のニュースの1シーンである。

  「野球道具は大切に扱いなさい」は少年野球の指導者の常套句である。その大切な野球道具を帽子はまだしもグラブまでも放り投げた大谷翔平投手の行為に頭を抱えた指導者は少なくないはずである。

 防衛大学校の卒業式を見て果たしてこうした若者に日本の防衛を託していいものかと一瞬疑念がよぎる人もいるだろう。

 彼らは厳しい制約と抑圧、想像を超えるような試練から解放された歓喜の瞬間を素直に表現しているのだろう。今までの人生で味わったことのない最高の感情表現がどのような形であろうと我々には止める権利はない。

 少年野球の大会で優勝の瞬間、子どもたが一斉にグラブを投げ上げたり、本塁打を確信した選手がバットを放り投げたら(本塁打した大谷選手のしぐさは「バットフリップ」と言われ称賛されている)指導者はどのように対応するだろう。「大谷選手がやったからOK」だろうか。(そんな声を聞いたことがある)

 人生の試練を乗り越えるためのモラトリアムとして厳しい指導が必要との考えもある。 

 スポーツの世界もルールやマナーなどは時代の変化とともに変わっていくものである。そんな多様化した現代社会に求められる理想の指導者とは「寛容」の精神をもって対応できる人物だろう。 

                           2023.6.15 佐藤繁信

 

 *余談になるがトラウト選手に投じた最後の一球はこの時は「スライダー」と表現されている。その後MLBでは従来のスライダーより水平方向の動きが大きいボールを「スィーパー」と呼び、「スライダー」とは別の表記になった。あの時はスライダーだったが今となってはスィーパーであったのだろうか。