庄内ボーイズ・活動日誌

山形県庄内地域で活動する野球チーム『庄内ボーイズ』の活動内容です

聴く力を磨こう

        聴く力を磨く

 

 宗教二世の問題が取りざたされている。周囲の無理解に失望しているという。ある二世が大学の時に初めてスクールカウンセラーに相談したところ「あなたは自分の人生を生きなさい」とアドバイスを受けたという。その言葉に何の疑問も持たずに軽々にうなずく自分がいた。ところがこの人はあまりに簡単な正論を返され、「わかってもらえないことがわかった」と感じたという。

 「やめられるならとっくに・・・。」

 正論を羅列し、振りかざし酔いしれた昔の自分の姿が重なり赤面する。

 指導した選手が進路先でつまずいたと聞いた。あまりに理不尽なその理由に愕然とし、話を聞くことにした。しかし私の口から出る言葉は「ここでやめたら後悔する」「もう一度頑張ってみろ」「時間が解決してくれるよ」等々とてもその道の先達といえる言葉とは思えないものだった。常識的な言葉や正論ほど力の及ばないものはない。復帰を説得する術を持たない安易な自分を恥じた。 

 人間は深慮を重ね多くの苦難を乗り越えていく。時に有用なアドバイスもあることだろう。しかしもっとも大切なことは相手の気持ちを「聴いてやる」ことだと今更気が付く。

 本当に親身になって聴いてやれば、相手は話すことによって今まで気が付かなかった自分を見つけ出すかもしれない。真情を吐露することによって違った考えを巡らすかもしれない。

 本人の苦しみを本当に理解することはできない。安易なアドバイスは逆に相手を苦しめるだけのようだ。

 指導者と選手、大人だろうと子どもだろうと変わりはない。直立不動、大声で発する「はい」の返答に自己陶酔する指導者ではいけない。これからの指導者は子どもたちの「言葉」を引き出し、その「言葉」にじっと耳を傾けるような関係でなければならない。

 じっくりと本人の話を聴いてやることこそが真のアドバイスのような気がする。今更ながら「聴く力」を養う心がけをしたい。

                           2023.7.7佐藤 繁信